信頼性とMTTF(MTBF)

信頼性とMTTF(MTBF)

更新日: 2021-03-31

信頼性 #

信頼性とは「システムやコンポーネントが特定の条件下で動作し、なおかつ特定の期間正しく動作させることのできる能力」のことを指します。

MTBFとMTTF #

MTBF(Mean Time Between Failure 平均故障間隔)とは、ある製品が使用を開始してから、もしくは故障から回復してから、次に故障するまでの平均時間のことです。 一方、MTTF(Mean Time To Failure 平均故障時間)とは、ある製品が使用を開始してから、故障するまでの時間のことです。

信頼性とMTTF #

ここでいう信頼性は、製品の単一のユニットが特定の条件下で動作し、なおかつ特定の期間正しく動作する確率のことを指します。このように信頼性を定義した場合、信頼性は次の数式で表すことができます。 $$ R(t) = e^{-\lambda t} $$ ここで$\lambda$は故障率を示しており、いわゆるバスタブ曲線の初期故障と摩耗故障を除いた故障率のことです。またMTBFは$\lambda$の逆数、$1/\lambda$で表されます。

ところでMTTFは製品を使用開始してから故障するまでの平均時間でした。MTTFをそのまま製品の寿命と考えて良いのでしょうか?よくある間違いですが、答えはNOです。

具体的な数値を上で示した式に入力して検証してみます。MTBFが10年(=87600時間)と仮定してみましょう。MTBF=10年はよくターゲットとされる数値です。

10年後に問題なく稼働している可能性は$e^{-10/10}=0.36788=36.7%$と37%程度しかありません。1年後だとしても90%です。このような製品は例え安物のおもちゃでもなかなか許容される数字ではありません。

MTBFの数字のイメージは上記のようなものですので、そのようにイメージしておきましょう。

MTBFの算出 #

MIL-HDBK 217 #

通常よく使われる算出方法にMIL-HDBK 217があります。これは1965年に初めて出版された米国陸軍の電子機器とシステムの信頼性を推定するために作成されました。

なお米軍では1996年に「信頼性がないことが証明され、間違って信頼性予測を引き出す可能性がある」として使用を中止することを発表しています。また実際にも1965年と現在の部品信頼性は全く異なっており、これを適用するのは適切でないという考えが一般的です。

ただ非常によく用いられています。この方法で算出したBTMFは実情とは数ケタ程度かけ離れた数値になることが一般的です。

加速試験 #

半導体の寿命予測は通常、加速試験の結果から算出されます。半導体の故障率は

$$ \lambda = \frac{60%信頼性水準での不良0の係数}{試験個数n \times 試験時間t \times 加速係数A_F} $$

で算出出来ます。 ここで 60%信頼性水準での不良0の係数:0.92 (90%信頼性水準での不良0の係数:2.30) ref. JIS-C5003 です。 また

$$ A_F = A_V \times A_T $$

で、$A_V$は電圧加速係数、$A_T$は温度加速係数です。電圧加速係数は下記で求めることができますが、通常電圧加速は行われないので1となります。

$$ A_V = \exp{(B(V_S - V_U))} $$

$V_S$:ストレス電圧

$V_U$:最大動作電圧

$B$:実験的に導出される定数

温度加速係数の算出によく使用されるモデルにアレニウスモデルとアイリングモデルがあります。

アレニウスモデル

$$ A_T = \exp{\left(\frac{E_a}{K} \times \left(\frac{1}{T_1} - \frac{1}{T_2}\right)\right)} $$

$E_a$:活性化エネルギー(故障モードにより異なりますが、一般的には保守的な値0.7eVや0.8eV).

$K$:ボルツマン係数(8.617x10^-5)

$T_1$:実使用温度

$T_2$:試験温度

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